神主さんって何をしているの? お仕事や役割について「生島神社」神主・上村宜道さんに聞いてみた

こんにちは、DATEMAKI編集部の野阪です。

突然ですが、みなさんは「神主さん」ってどんなことをしているか知っていますか? おそらく多くの人にとって、「実際、何をしているのかよく分からない仕事」ではないでしょうか?

僕自身、漠然としたイメージしかなくて「日本人としてちょっとマズイかも……」という気持ちをずっと抱えていました。

そこで今回は、実際に神主さんとして働いている方に、お仕事の内容や神社の役割についてざっくばらんに聞いてみることにしました!

左)上村さん 右)野阪

お話を伺ったのは「生島神社」で神主さんをされている、上村 宜道(うえむら のりみち)さん。

上村 宜道さん
1975年生まれ。現在は兵庫県尼崎市にある御実家の生島神社の神主さんで、兵庫県神道青年会の会長を務められている。かつては、廣田神社や大神神社で神主さんとして奉仕されていた。

神主さんのお仕事とは?


「取材にあたって、上村さんのFacebookを拝見させていただきました。全国各地に飛んで活動されていますよね」


「そうですね(笑)。自社を中心とする祭祀や青年神職としての活動はもちろんではありますが、それに付随するもの、またはまったく別世界のボランティア活動などもありますね」


「中でも、神主さんとしての活動ってどういったものがあるんでしょうか?」


「その質問は、おそらく一般の方のほとんどが最初に思うことでしょうね。神社の護持運営に関わる事務的なことや、神域を清浄に保つことも当然ありますが、神主の使命として挙げられるのは第一に祭祀(さいし)、第二に参拝者の人生儀礼などのご祈祷ですね」


「祭祀とご祈祷ですか・・・・・・?」


「そう。よく間違えられるのですが、お宮参りや合格祈願、お祓いといったご祈祷は神主の一番の使命ではないんです。神職が崇敬者の個人祈祷をするようになったのは鎌倉時代初期からで、それも重要なことですが、一番は日本国民の幸せや世界の共存共栄を神様に祈ることなんですよ」


「そうなんですね! ご祈祷のイメージの方が強かったです。ちなみに祭祀では、具体的にどういうことをするのでしょうか?」


「主には『ご皇室の弥栄と全日本国民、そして世界が平和で豊かであるよう大神様の御力を賜りますよう』と祝詞(のりと[神さまに祈る言葉])を奏上しています。年間通してたくさんの祭祀がありますが、主なものとしては以下が挙げられます」

祭祀 読み 説明
例祭 れいさい 各神社において、1年に1度の行われる最も重要な祭祀。その神社が創建されたことを祝福するお祭りであり、「例大祭」や「大祭」、「御祭(おんまつり)」とも称される。
祈年祭 きねんさい 五穀豊穣をお祈りし、あらゆる人々の生業の発展、国家と国民の安泰や反映を祈願する祭祀。「としごいのまつり」や「春祭り」とも呼ばれ、現在は毎年2月17日に執り行われる。
大祓神事 おおはらえしんじ 国民全てが半年の間に積もった身の罪・穢れを祓い清める祭祀。6月30日の「夏越の大祓(なごしのおおはらえ)」と12月31日の「年越しの大祓」の年2回執り行われる。
新嘗祭 にいなめさい まだ誰も手に触れていない新穀を神さまに供え、自らもいただき、その年の収穫に感謝を捧げる祭祀。「しんじょうさい」や「にいなめのまつり」、「秋祭り」などと呼ばれ、11月23日に執り行われる。


「では、各月くらいのペースでお祭りをしているってことでしょうか?」


「そうですね。神社によって違いますが、毎月1日とか15日とか決めてお祭りをしていることもあります。

でも、実は神主は毎日祭祀をしているんですよ。朝は日供(にっく[神さまへのお供えもの])を献上し、『今日も日本国民が平和に過ごせますように』、夕方には『今日も日本国民が健やかに過ごせました、神様ありがとうございます』と祝詞を奏上します。

それだけで年間700回以上お祭りしていることになります。各社の祭典にもよりますが、多いところだと年間1000回以上お祭りをしていますね


「1000回も! すると、神主さんは毎日祭祀をしながら、一般の方のご祈祷をされているわけですね」


「そうです」


「休みの日ってどうなっているんですか?」


「これも神社によって異なります。職員が大勢いるところは一般企業のように休みの日を決めていますが、生島神社は宮司と私の2人なので、宮司と相談しながら社務に支障が出ないようにお休みを頂いています」


「なるほど。答えられそうな範囲で大丈夫なんですけど、神社運営のための資金はどうやって得ているのでしょうか?」


「神社は一般の方のご祈祷料や、御守・御札の授与などで初穂料(はつほりょう[お金])を頂いております」


「それって、普通のサラリーマンと同じくらいなんでしょうか?」


「それも神社によって違いますね。ただ、神社は一般建造物ではないので、修繕にとてもお金がかかるんです。だから、もしもの時のために、ある程度蓄えておかないといけないんですよ。

それこそ災害とかで潰れて、再度立て直そうとしたら、何百・何千万円ではなく、何億円もの話になります。ですので、給与としても一般の方よりは多くはないでしょうね」

神社は何のための場所?


「神主さんの一番のお仕事は祭祀ということですが、そもそもその文化はどこから生まれたんでしょうか?」


「元々、日本人はお米を作る農耕民族でしょ。『年貢』といえばお米を指すように、お米はお金と同じように扱われていましたよね。だから、お米を作るのは命をつなぐことで、お米が作れないとたくさんの人が死んでいくんです。でも、実際には台風や火事といった自然災害でお米が作れないときもあります。じゃあどうするかっていうと、お米を作れるように祈ったんですよ。

本来、日本人は雨、風、岩、土、木々など全てのものに対して『神的な何かが宿っている』という感覚を持っています。そこから色んな(八百万の)神々が生まれ、畏敬の念(畏れ敬う気持ち)から神々をお祭りするようになったわけです」


「というと、技術が発達し豊かな時代になってきたから、ご祈祷の仕事が出てきたということでしょうか?」


「そうですね。先ほどもお話しましたが、個人的な願望を神様にお願いするようになったのは鎌倉時代に入ってからなんです。それまでは一般の方は神様に個人のお願いではなく、まずは感謝の気持ちを伝えに神社に来ていました


「感謝……!」


「『この1年無事に過ごすことができました、神様ありがとうございます』って。本来私たち日本人は、そういう感謝の気持ちのもとで行動してきたんですよ」


「先日取材させていただいた葉室さんも、『日本人の心は”ありがとう”という感謝の気持ちだ』ということを仰っていました」

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「そうそう。いまは豊かになり過ぎて気付けなくなっていますけど、私たちの根幹は感謝の気持ちで。そう考えると、やっぱり『ありがとう』って凄い言葉なんですよ」


「神社は人々の平和を祈るための場であり、感謝を伝えるための場でもあったわけですね(なんだか、個人的なお願いしに来ている自分が恥ずかしい……)」

神道は宗教ではない?


「上村さんは生島神社の神主さんのほかに、兵庫県神道青年会の会長という役職に就かれています。こちらではどんな活動をされているのでしょうか?」


「兵庫県神道青年会というのは、40歳までの兵庫県内の青年神職の会で、これは北海道から沖縄のすべての都道府県でも組織されています。

で、何をしているのかっていうと神道教化活動ですね。要するに、先ほどお話した感謝の心や自然に対する畏敬といった、日本人が元々持つ感覚を神社を通して、一般の方に知っていただくことです。

その中には戦争で亡くなられた方のための慰霊祭もあれば、献血活動や震災の復興支援といった人を助ける活動もあります」


「その関係でいま、日本全国色んな所に行っているのでしょうか?」


「そうですね。他県の青年神職の会とのつながりで日本全国何か式典や事業などがある度、行かせていただいています」


「その青年会の活動って、どれくらいの頻度であるものなんでしょうか?」


「毎月の会議と実際の教化活動の2つに分けられますね。教化活動をするにあたって会議があるんですけど、これは協議を2回・審議を1回毎月行います。そこから実際に教化活動を行なうわけですが、その内容によって頻度はまちまちですね」


「ちなみ、青年会の活動にかかるお金は……?」


「会としての活動資金は他の業界の青年会と同じく、年会費ですね」


「ボランティアみたいなものなんですね。そもそも、どうして教化活動をする必要があるんでしょうか?」


「本来、教化活動なんて必要なかったんじゃないかなって。でも、戦後の教育が大きく変わって、色んな政治や宗教上の問題がごちゃまぜになっているうちに神道が薄れていったんですよ。だから、いまは日本人として元来持つ、当たり前の心や感覚が忘れ去られている状態なんです。

教化活動はそういう日本人が忘れてしまったものを呼び覚ます活動なんですけど、これは俗に言う宗教活動ではないんですよね。そもそも神道は宗教ではなく、日本の国土で、ありとあらゆる自然から生まれた日本人独自の感覚や考え方、姿勢のようなものですからね」


「神道は宗教ではない……?」


「そう、あくまでも感覚の問題ですよ。だって、みんな窮地に陥ったら『“神様”なんとかしてください!』って口に出したり、心の中で思ったりするでしょ? その”神様”ってイエス・キリスト? アッラー? 違いますよね。明らかに日本にいる八百万の神々のことですよ」


「確かに! 信仰しているわけじゃないのに思い浮かべますね……!」


「でしょ? その感覚が日本人なんですよ。なので、神社は日本人のシンプルな源っていうのかな、根源をなしているところだと思うんです。心や気持ちの荒れた方でも神社に来ると、『なんか気持ちいいな』って想いに駆られるわけですよ」

神主さんの使命とは?


「弊社では寺社での体験予約サービスを運営していて、ありがたいことに生島神社でも利用いただいています。神社をコミュニティの場にしていくことについてはどのように考えていますか?」


「目の付け所がとても良いと思います。元来、神社は地域コミュニティの場としてはもちろん、心の『拠り所』としても機能しているものなんです」


「心の『拠り所』?」


「例えば、東日本大震災が起きてもう6年経ちますけど、未だに私たちは新しいお宮を建てるために東北に行っているんですよ。

東北にはまだ家族が見つかっていない人もいれば、酷いご遺体を目の当たりにして傷心している人もたくさんいらっしゃいます。でも、そこに小さな祠(ほこら[神を祭ったやしろ])があれば、人々がいろいろな思いを胸にもって手を合わせに来るんですよね。

そりゃ手を合わせたところで死んだ人たちは戻ってこないけれど、それでもなんだか救われた気持ちになるじゃないですか。これが「拠り所」なんですよ。

みんなが傷心しているときに何も拠り所がなかったらどうなりますか? この先どうやって生きていけばいいか分からなくなって、死んじゃうかもしれないですよ」


「確かに、そうした拠り所がないのは辛いものがあると思います」


「だから、神主の使命って神社を人々の拠り所にしていくことだと思うんですよ。人々が神社に来ていただけるように開放していくこと。お参りする方が『なんか気持ちいいな』って思っていただけるように管理すること。そして、日本人が本来持っている感覚を取り戻せるような特別な場にすること。これが私たち神主がやっていくべきことですね」

実はこの日は数件のご祈祷があり、都度中断しながら取材していました。神主さんというと、どこかのんびりしているイメージがあったのですが、実際は結構忙しそう……!

また、取材を終えて境内を見渡してみて、改めて認識したことがあります。それは、「日本人にとって神社は大切な場なんだ」ということ。そこには何か神聖なものがありそうで、やはりどこか清々しい気持ちにさせられるんです。

こうした気持ちになるのも普段神主さんがしっかり神社を管理してくれていたり、昔の人々が連綿と続く歴史を守り受け継いでくれたりしたおかげ。そう考えると、今度神社に来るときは感謝の気持ちを伝えてみようという気持ちになりました。

みなさんも神社に行かれる際は自分のお願いだけではなく、色んな人やことへの感謝の気持ちを、ぜひ伝えてみてください。

(2017/06/13 11:44 誤字の修正を行いました)

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1994年生まれ、大阪出身。DATEMAKI編集長。複数のメディアの立ち上げに関わりながら、ライター・エディターとして活動している。「個の夢が否定されず、それぞれの人が自分らしく活きられる世界」を。